速読ができる夏炉冬扇さんの読書歴の中に向田邦子『眠る盃』があった。悲運にも取材中の飛行機事故で亡くなった脚本家向田邦子さんの作品は昔から好きだったことと、「眠る盃」とは何のことだろうという興味から講談社文庫1996年第35刷版(初版は1982年)を入手し、やっと昨夜読み上げることができた。今回の私は目の調子が悪かったとはいえかなりの遅読でちょうど1か月を要している。
この本は主に1970年代に向田さんが色んな雑誌に発表した随筆集で、早くも3番目の記事の19ページで「眠る盃」の謎が解けたのは嬉しかった。誰でも人の名前や言葉を間違って覚えてしまうことがある。向田さんの場合は名曲「荒城の月」の歌詞である「春高楼の花の宴 めぐる盃‥‥」とあるべきところを「春高楼の花の宴 眠る盃‥‥」と覚えてしまって、以降修正が利かなかったことかららしい。
で、私も思い出して「春高楼の花の宴‥‥‥♪」と、風呂場で唸っている始末。
向田さんの文章は気取るところがなく、庶民的で分かりやすくてオチもとってもウマイなあ、と、思う。それと私も昔よく使っていた言葉が随所に現れて懐かしかったこと、漢字にしてもひらがなにしろ、その使い方に自分が迷っていた部分が「これでいいのだな」と納得できたところも勉強になった。
「だいこんの花」や当然に森繫久彌についての随筆もずいぶん楽しく読ませてもらった。
当地の今日は雨、まだ寒いとはいえ寒さは確実に緩んできて、蕾が膨らんでいる。
白ボケ
匂い椿
一才桜
『父の詫び状』って、なぜか遠藤周作の娘さんの作品だ思い込んでいたのだが、何度も『眠る盃』に出てくるので、疑い深い私は念のため書棚を確認したら向田さんの作品だった。内容について全く記憶がないのはやっぱり随筆集だったからだろう。
もう一度読んでみることにしたい。